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ATENOTEは、創業100年以上、北陸随一の取扱い樹種と歴史をもつフルタニランバー株式会社運営の「地域材活性化プロジェクト」です。

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取り組み事例

後藤正文・能登材ダイアログ⑤-ギターとスタジオ

ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さんと、能登の木材を活かす企画「後藤正文・能登材ダイアログ」。第5回の今回は製作していたギターの完成お披露目の様子をお届けします。

2025年12月、製作サイドに状況を伺ったところ、「もうすぐ完成する」とのお返事をいただきました。年明けには音出しまでできることを想定して、各自の予定を調整しました。初めての音出しと対面の日は、2026年2月某日に設定されました。場所はもちろん、後藤正文さんが仲間たちと建設した音楽スタジオ「MUSIC inn Fujieda」です。

あっという間に当日を迎え、静岡県藤枝市へ向かいました。ATENOTEチームは石川県から車で移動していましたが、その途中、静岡のサービスエリアで、製作を手掛けた奈良県のEVERTONEのチームと奇跡的に遭遇しました。この偶然には、ここまでのご縁も含めて運命的なものを感じました。

昼頃には全員が集結。EVERTONEからは代表の門垣氏と、ピックアップを製作するEuphorealの藤野氏。そして後藤正文さん、さらにMUSIC inn Fujiedaのスタジオスタッフの皆さんも立ち会ってくださいました。

全員が見守る中、完成した5本のギターケースをスタジオに並べ、1本ずつお披露目を開始しました。ギターを見て後藤さんは「めちゃくちゃ重量感ありますね」、さらにしげしげと眺めながら「かっこいいですね」。

能登ヒバと、能登の被災地からレスキューされた古いケヤキを組み合わせて作られたオリジナルギター。その初対面の場面は、このダイアログ第3回でも紹介しましたが、それは塗装前の状態でした。藤野さんは「塗装されたことで、音はかなり変わっています」と付け加えます。

5本のギターを1本ずつケースから取り出し、スタンドにセットしていきます。かつて後藤さんが愛用していたギブソン「マローダー」の形を参考にしながらも、1本1本が異なる方法で製作されたギターたちが、スタジオの照明を受けて輝いていました。

その光景を見て、「これは壮観ですね」と後藤さん。続いて「同じ形の新しいギターが、これだけ並ぶことはなかなかありませんからね」と藤野さん。さらに門垣さんも「楽器店でも、メーカー違いで並ぶことはあっても、同じ作りで樹種だけが違うというのは見たことがありません」と語りました。楽器作りのプロにとっても、初めて目にする光景のようです。

全体を俯瞰しながら、後藤さんはまず試奏前に外見についての感想を口にしました。

「見た目でいうと、オール・ヒバのものが昔使っていたギターに近いですね。あれは先輩から譲ってもらったものなので、有無を言わせずあの色しかなかったんですが。ただ、今回は“能登の木を使う”というコンセプトなので、古材のケヤキを使ったものは能登の人たちにとっても嬉しいでしょうね。どれもかっこいいですけど。」

そして、少しうずうずした様子でこう続けました。

「では、弾いてみましょう。音の違いもギターの楽しさの一つですからね。木が違うだけで音は変わりますから。」

今回、ギターを鳴らすために用意されたアンプは2種類でした。

1つ目は、フェンダーのツインリバーブ。このアンプは、この場所でレコーディングされたASIAN KUNG-FU GENERATIONの新曲「おかえりジョニー」でも使用されたものです。後藤さんによると、「味付けが少ない音も出せるアンプなので、これで弾くと1本1本の差がわかりやすい」とのことでした。

もう1つは、門垣さんが持ち込んだMATCHLESSの1スピーカーのアンプです。こちらは、後藤さんがレコーディングで使用しているアンプの小型版のようなアンプです。1スピーカーのアンプは音像がはっきりしており、音の違いを判断しやすいというメリットがあります。

こうして試奏が始まりました。試奏は、ギターを持ち替えながら「もう一度、先ほど弾いたものに戻ってみましょう」といった具合に進み、複雑に比較しながら行われました。そのため、ここでは試奏の流れをそのまま追うのではなく、それぞれのギターに対する感想をまとめて紹介したいと思います。

まず、ルックスを見た時点で「昔使っていたものに近い」と語っていたオール・ヒバのギターです。能登ヒバそのものの特徴が最も表れているであろう1本です。実際に弾いてみると、後藤さんは「これはブライト(明るい音)ですね。特に高い方の弦が。若い頃だったら、これを選んでいたかもしれません」と感想を述べました。

続いて、ボディのトップとバックにケヤキ材を使い、その間にヒバを挟み込んだ構造のギターです。弾いた瞬間、後藤さんは「全然違いますね。どちらにも良さがありますが、こちらの方がふくよかで丸みのあるサウンドですね」と語りました。「硬いケヤキでヒバを挟み込んでいるので、そういう音になるんです」と藤野さん。

3本目は、ヒバのボディのトップにだけケヤキを貼ったタイプです。後藤さんは「塗装前の段階で、自分が使っているレスポール・ジュニアに一番音が近かったのがこれなんです」と話します。このギターについては、カポを付けて弾いたり、2種類のアンプをつなぎ替えながら試したりと、特に入念にチェックしていました。

続いて試したのは、逆にヒバの間にケヤキを挟み込んだ構造のタイプです。作り手のこだわりもあり、5本の中で唯一アームが付いた1本となっています。後藤さんはそのアームも使いながら演奏し、「少し飛び道具っぽいところもありますが、これはこれでおもしろいですね。上級者向けという感じもします。見た目はめちゃかっこいいです」。

そしてもう1本が、比較の参考として製作されたオール・マホガニーの赤いギターです。門垣さんによると、「ネックには、1950年代にはすでに希少になっていたといわれるキューバンマホガニーを使用しています。高級家具などにも使われる非常に貴重な木です。ボディには同じく希少なホンジュラスマホガニーを使っています」とのことでした。これを弾いて「これは当たり前にギブソンの、甘い音ですね。長らく人々が経験上選んできた音、というか」と後藤さん。

その自分にとっても“当たり前の音”であるこのギターを一つの指標として、試奏の合間に何度もこのギターへ持ち替えながら、他のギターのキャラクターを判断していました。

1時間近くかけ、試奏終了。

結果、3番目に試奏したケヤキ・トップの能登ヒバ・ギターが選ばれることになりました。

里山保全と林業復興を掲げてスタートした能登ヒバ楽器プロジェクト-ATENOTE-。能登の震災で倒壊した家屋からレスキューされたケヤキの古材。木材の持つ音の特性を最大限引き出すEVERTONEのピックアップ。その音を気持ちよく響かせるMUSIC inn Fujiedaの土蔵スタジオ。さらには後藤さん自らが監修したサウンド。5つの交点がこうして1本のギターの形に集約されました。

そして選定後、後藤さん、EVERTONEの門垣さん、藤野さん、ATENOTE主催の古谷の4者で座談が始まりました。

選んだケヤキ・トップの能登ヒバ・ギターと

古谷 試奏が一通り終わりましたが、いかがでしたか?

後藤 おもしろかったですね。とてもいい経験ができました。仮に、楽器屋でこれだけの本数を出してもらって、1時間以上弾いたら買わないといけない空気になりそう。

古谷 実は、事前に藤野さんから「どれ選ぶと思います?」って電話で予想を聞いてたんです。

藤野 塗装なしの時はケヤキのトップがいいっておっしゃってましたけど、塗装したものを全部弾いてみたら、音が変化したので、僕の予想ではケヤキのトップ・バックのものに変わるんじゃないか?って思ったんです。そうやって予想してましたけど、今日、このスタジオで聴いてみたらちょっと低音が強めでした。

後藤 そんな感じ、しましたよね。

古谷 弾く場所でも違いますよね。

後藤 弾く人によっても違いますね。

門垣 個人的にはオール・ヒバが好きでしたけどね。レコーディングとかで使うなら参考元のギターに近くて個性のある明るい音がいいと思うから。

後藤 そうですね。キラッとしたアルペジオを足したい時とかに。

門垣 僕の感覚では、オール・ヒバはオリジナルのメイプル材のマローダーをアップデートした感じでした。で、MATCHLESSのアンプと相性がいいかな? と思って持ってきたんです。ここまでトーンを下げて弾くのは、初めて見ました(笑)

後藤 年を重ねると、音の好みも変わりますよね。

古谷 もし、このギターにWeezerのシール貼ったら見た目もまんまですよ。

藤野 でも、そのシールがもうない(笑)。

古谷 今回、同じ作り、同じピックアップで、それぞれ違う樹種で5本のギターを作りました。だけど、違う樹種のギターをピックアップでそれぞれ音が似るように調整することも出来るんですかね?

藤野 個体によって違いは出ると思いますけど、目指すことは出来ると思います。エレクトリック・ギターの音って(ピックアップを中心とする)エレクトリックパーツが半分、材質が半分ですからね。

古谷 このギターは完成したばかりですが、今後、楽器が成長して音が変わったり、今後、後藤さんが表現したい音が変わっていくこともあり得ますよね。

藤野 言ってもらえればいつでもピックアップで調整します。

後藤 僕がライヴで使っている’61年のレスポール・スペシャル。「ソラニン」とかで弾いてるもの。あのギターは、「本当は使いたいけどちょっと経年劣化してきたなぁ」ってなってたギターなんです。それをEVERTONEのピックアップにしたことで復活しましたからね。

藤野 ちなみにEVERTONEでは3段階あるピックアップのうち、今回はどれも一番トラッドな音が出るものを載せました。アームが付いたもの以外は。

古谷 で、もともと3本作るといってたものが5本になり‥。

門垣 盛り上がっちゃって(笑)。でも、これ、1本1本、すべて手作業だったんですよ。

古谷 NCルーター(コンピュータ制御の加工機械)、使ってない?

門垣 使ってないです。CNCルーターを使わずに作っている職人さんなので。時代考証とかも考えて作る方なので仮にCNCを導入しても手作業でやるでしょうね。そういう職人のこだわりが詰まっています。

後藤 最近、新品で欲しいと思うギターにめぐり合わなくなっちゃって、諦めてたんですけどね。一生分のギターは持ってると思ってたけど、全部よかった。

藤野 いい材料で作ると、新しいけど良い。ヴィンテージの古き良き、ではなく。

門垣 良い材を良い職人さんが作れば尚更です。それでないといつまでもヴィンテージが最高ってなってしまう。大人たちがそれを言うのはポルノを見せる大人と変わらないと思うんですよ。若い子に変な幻想を与えてしまって。NEVEなんかもそうですが、やっぱりビンテージじゃないとプロみたいな音は作れないのかって若い世代が悩んでしまうような事が無いようにちゃんといいものを作っていかないと。

後藤 なるほど。

古谷 高価なヴィンテージが最高ってことじゃ、若い子は楽器始められないですからね。そこを解決するために、木材屋としても、ギター好きとしても、国産材にも注目してほしいです。

門垣 ホンジュラスマホガニーとかは、今はもう中々入手できないですからね。

後藤 ある程度いい楽器で始めるのが上達への近道だとは思います。音の悪い楽器じゃ楽しくならないから。

門垣 今回ギターを加工した方や塗装した方が言ってたんですけど、ヒバに関しては非常に硬く特に加工が難しい上に塗装してからすぐにラッカー塗装にクラックが入ってくるほどどんどん変化していく材らしいんです。それはサウンド面でもルックス面でもポジティブな方向への変化だと感じています。

後藤 味のある方向へのね。

古谷 木は変化する。それが天然素材ですから。木材屋としては、そこも愛してほしいです。

藤野 育てるのを楽しんで、ですね。

古谷 いずれにせよこの5本の兄弟ギターがそれぞれにしっかりと意味をなしてくれると思ってます。そこで今後の提案ですが、後藤さん、ATENOTE、EVERTONEで1本ずつ、そして1本は能登で展示して、その町が活気づくようなことをしたいです。残る1本も復興支援と取り組みが拡がるような企画を考えたいです。

後藤 ぜひ。

藤野 EVERTONEでは、マホガニーで出来たものを持っておきます。

門垣 もともと楽器材として使われるマホガニーを持つことで、新しい樹種との比較も出来ますから。それに今後、後藤さんが使いたいときにお貸しするのがいいんじゃないかと思います。

藤野 我々は関西拠点なんで大阪公演の時にパッと持っていくとか。

古谷 今回、後藤さんが選んだケヤキ・トップのギターは4月4日の30周年ライヴで披露されるんですか?

後藤 使います。昔の曲とかもやるので、皆さんに喜んでもられるかな、と思っています。

古谷 マローダーを使ってた当時の後藤さんが復活するというのもたまらないですね。

後藤 こういうのもご縁なので。出会ったものを育てていく。使いながらさらに良くしていく。そういうのって大事だと思います。3年、5年とかかけながらね。そうやって使っていくの、楽しみですね。

(インタビュー/構成 今津 甲)

こうして、能登ヒバと輪島の解体現場から出てきた災害材は、音楽スタジオの内装、そして5本のエレキギターへと生まれ変わりました。

そこに込められているメッセージは、「失われたものを終わりにせず、次の価値へつなげていくこと」。災害の記憶を風化させるのではなく、形で残し、音や空間として未来へ届けていくという想いです。

MUSIC inn Fujiedaがそうであるように、このギターもまた、未来に残していきたいと考えています。能登で起きた出来事を忘れないために。そして、その記憶とともに生まれる音を、次の世代へつないでいくために。

記事の中で、繰り返しお伝えしていますが、この企画を通して防災への意識や被災地への支援について考えるキッカケになれば幸いです。またATENOTEではこの取り組みを能登の皆さまと共有していきます。

次回はいよいよ連載の最終回。初披露されるライブのレポートと、完成したギターを詳しくご紹介します!

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