取り組み事例

ビリンバウとは？

カポエイラには楽器が欠かせません。通常は、歌に5種類ほどの楽器や手拍子を合わせてゲームを盛り上げます。その中でも代表的な楽器が「ビリンバウ」という弦楽器です。柄となる木の棒をしならせ弦を張り、そこに音を増幅させるための瓢箪を装着したシンプルな形状で、竹の棒で弦を叩いて演奏します。

このビリンバウは従来、ビリーバと呼ばれる細い木の幹を池崎氏がブラジルで調達して日本に持ち帰り自作、もしくは完成品をブラジルからの輸入で入手していました。しかし、輸送時のトラブルによる破損、また中には粗悪品が含まれる場合があるなど、品質の面でいくつもの問題を抱えていました。また、コロナ禍によって輸入そのものが難しい状況になり、需要に見合う十分な供給を受けられないこともありました。

枝材を求めて志賀町の山林へ

入手困難なビリンバウを能登ヒバで作ることができれば、もっと簡単に楽器を手に入れられるようになるのではないか？

そう考えたプロジェクトメンバーの3人は、ビリーバに代わる能登ヒバの枝材を探しに、志賀町の山林にある能登ヒバの伐採現場を訪れました。

重機の通った凸凹道や、雨でぬかるんだ地面に悪戦苦闘し、想像以上に過酷な道中でしたが、県職員の中村さんのアテンドのおかげもあり、能登ヒバだけでなく、針葉樹と広葉樹、色んな木に触れることが出来ました。GUETONOTEでは、利用価値がないとされた枝材や廃材を活用することにこだわっているため、伐採の際に邪魔になって廃棄された枝が山積みになっている光景はまさに宝の山のようでした。これらは放置されたままだと、10〜15年という長い年月をかけて土になっていくそうです。

ビリンバウに適した材に求められるもの

ビリンバウとして実際に使用するため、材に求められる要件がいくつかありますが、特に重要なのが「硬いこと」と「真っ直ぐであること」の2点です。硬さが柔らかすぎると弦を張るためにしならせた時に折れてしまったり、それが原因で怪我をしてしまう危険性があり、音質にも大きく影響を及ぼします。また、真っ直ぐな枝だからこそ弓形の美しい形状をもたらしますが、節があったりあまりに折れ曲がっていては美しくありません。

とは言え、能登ヒバの枝が無数に広がっている伐採現場、そのくらいの要件を満たす枝材は簡単に見つかるものだとメンバーみんな思い込んでいました。しかし、この2つの要件を満たしてくれる能登ヒバの枝材が全くと言って良いほど見つかりません。枝の山をかき分け、崩し倒し、引っ張り出し、たくさんの枝を検証してみましたが、楽器として高いパフォーマンスを発揮できるに足る枝材はほとんど見つからず、結果的に3人で2時間ほど探し回ってようやく1本だけ合格点を与えられる枝材を発見することが出来ました。

ATENOTEは能登ヒバの活用が大前提のプロジェクトですが、もしかしたら能登ヒバ以外の木でもビリンバウ作りに適したものがあるかもしれない。そのため、スギ、サクラ、名前も知らない雑木まで様々な樹種の枝を調達してきました。どの木で、どんな音が奏でられるのか、とても楽しみな気持ちになって伐採現場を後にしました。

普通は立ち入ることが出来ない能登ヒバの伐採現場、貴重な経験をさせていただきありがとうございました！