僕らは同じテーブルに座っている
ストーリーは多い程いい
GAKU-MC この間、自分のツアー中に能登に行き、被災地を実際に見てまわらせてもらいました。ただただ力強く復活していただきたい。そしてこれからどうやって歩みを踏み出すのかをずっと見守っていきたいと思いました。翌日に地元の能登高校の球技大会に招待いただき一緒にサッカーをしてきました。LIVEもしてきました。
ーー社会的な支援に関しては、いつごろからたずさわっているんですか?
GAKU-MC 僕自身は東日本大震災以降、akali to live(アカリトライブ)という活動をやっています。ap bankの活動にも微力ではありますが、関わらせていただいてます。
古谷 去年、つま恋で見ました。
GAKU-MC 僕、出てました(笑)プロジェクトが良かったのは社会貢献を目指す人たちに寄付じゃなく低利で貸し付けた点。お金をもらって終わりではなく自分で考えてやりとげないといけない。もちろん色んな人がいろんな形のサポートしますが。
ーーこれもある意味、長期的支援ですね。しかも人との繋がりも欠かせない。
古谷 ATENOTEもそういうイメージなんですよね。楽器用の国産材を売ってもうけるとかじゃなく、川上のきこりサンから川下のミュージシャンまで、みんながビジネス的にもウィンウィンになるような形を作りたい。
GAKU-MC 素晴らしい!
古谷 あと、そういう縦の連携にプラス、横の連携も考えたいんです。
ーー横の連携?
古谷 日本の林業ってどこへ行っても抱えてる問題は同じなんですよ。高齢化で担い手がいない、とか。でも取り組みはそれぞれの県でしかやってなかったりする。ATENOTEは能登ヒバ・プロジェクトですけど、ご縁があったら他の県の木もうまくミックスしたい。
ーーそういえば古谷さんは今年のフジロックで苗場周辺の木で作ったウクレレを展示する、というのをやられてましたね。
GAKU-MC それは木が地元に帰ってきたぜ、っていう感じでいいね(笑)。僕らはアメリカのスーパー・スターが使ってた楽器がいいだろう、ってところから始まってる。でも今みたいなストーリーがあると自分が弾く楽器に想いが載りますよね。ステージでそのことを伝えるとまた違った音楽になるだろうし。音楽もストーリーが多い程いい。
古谷 地元の楽器屋のスタッフの方々を木の伐採現場に連れて行ったところ「あれ以来、楽器の売り方が変わりました」って言われたことがあります。「これはあのミュージシャンが使っていて」みたいなトークから「この木はこんなストーリーがあって」という風に変わったって。
ーーちなみにGAKUさんがギターを手にしたのはいつごろなんですか?
GAKU-MC ヒップホップは’85年ぐらいから聴いてますが、初めてギターを買ったのは2000年代。30半ばです。Mr.Childrenの桜井と「手を出すな」という楽曲をリリースしました。そこで入ってきたお金で車を買うのかパーティーをするのか?ってなったときギターを選んだんです。Fコードも押さえられなかったんでもちろん車を買えるほどのギターは買いませんでしたが(笑)。
ーーなぜギター、だったんですか?
GAKU-MC 30才前に生バンドの人たちとラップするようになって、バンドってこんなに楽しいのか!って思ったんです。ところがそこで曲を作ろうと思っても自分はギターが弾けない。ギターの人の家に行って考えるしかない。じゃあ自分でもギターを、ってなったんです。何も分からなかったからギター教室に通って、そのうちに先生に家に来てもらうようになって‥。
古谷 ウカスカジー(Mr.Childrenの桜井和寿とのユニット)を始めたころですか?
GAKU-MC その全然前ですかね。おかげで今は自分のライブはバンド編成で僕もギターを弾きながら、それとは別に弾き語りのライブもやっています。
ーー振り切れましたねー。
GAKU-MC ギターをやることでラップもうまくなった。
ーーあ、そういうのがあるんですか?
GAKU-MC はい。ギターでコード弾きながらやるんでリズム感もよくなって。ラッパーはギター弾いた方がいいと思います(笑)。以前はラッパー同士の会話しかなかったんですけどね。
ーーフロウとかライムとか‥。
GAKU-MC うん。以前はラッパー同士の会話しかなかったんですけどね。それが今はミュージシャンと譜面の話もするし、アカリトライブではギタリストに徹してお呼びしたゲストの方の曲を弾いたりしてるんです。全体で50曲とか(笑)。
古谷 そのライブはどんなところでやってるんですか?
GAKU-MC フェスでもホールでも。過去に自分が大好きだった藤井フミヤさんが来てくださったこともあるんですよ。「なんでもいいよ、好きな曲やるから」って言われて「かっこいー!」ってなって(笑)。これ全部、ギターがもたらしてくれた繋がりですからね。今回もこうして繋がることが出来たし。
ーー古谷さんもいまなおバンドでギター弾いてますしね。そのギターが輸入材で作られていることに気付いて国産材ギターの着想への一助となった。
GAKU-MC いいですねー、社長ギター(笑)。
コミュニケーション作りがミュージシャンの役割
ーーGAKUさんはギターの材への関心はいかがでした?
GAKU-MC いやー、改めて言われないと考えなかったと思います。最初のギターからしてプロの先輩に選んでもらったので。
古谷 ご出身はどちらでしたっけ?
GAKU-MC 東京です。
古谷 東京も多摩の方の杉はPRしてますよね。
GAKU-MC チェンソー持った若い人たちがいるの聞いたことある。
古谷 東京チェンソーズですね。若いキコリの人たちが僕らと同じように林業を盛り上げようとしている。フジロックではウチの近くでも出展してて。
ーーきっと全国にはそういう取り組みを行うグループは沢山いるんでしょうね。
GAKU-MC だから、まとめていきたいですよね。
古谷 楽器で言えば、物づくりのワザを持った日本の職人が作ってるんだ、っていうことも海外に知らしめたいし。
GAKU-MC びっくりするぐらい沢山の日本人アーティストが海外に行ってるんだから、可能性ありますよ。
古谷 最近、キャビネットが能登ヒバ材のアンプも出来たんですよ。普通は黒い皮で包むところをリビングにも置けるよう無垢の木目を出して。
GAKU-MC それだったら妻にも怒られない(笑)。
古谷 ヒバで作ったパチカとかも出しましたし。
ーー もう、そういうのも全部ふくめフェスやったらいいじゃないですか? 取材を受けた人、全員参加で(笑)。
古谷 いつかやりたいですよね。
GAKU-MC いつも思うんですけど、何かを支援する活動ってテーブルの上のビールの粗相のようなものだ、って。
ーービールの粗相?
GAKU-MC みんなでメシ食べてるとき誰かがビールをこぼす。そしたら拭くものをとりにいく奴、新たなビールを頼む奴‥自然とみんなが分担して動くじゃないですか? 僕らは同じテーブルに座ってる。同じ国に住んでいる。そこで普段からいいコミュニケーションがとりやすいようにつないでいくのがミュージシャンの役割の一つかな、と思ってるんです。
古谷 能登もようやく仮設住宅が7千戸ぐらい出来たんですけどね。そのうち千戸ぐらいは木造になった。僕はそのための木材、家具のための材を提供したりしてました。これから大切なのはまさにそこに住んでる方たちへのコミュニケーションなんですよね。エンターテイメントも含めて。
ーーそんな今、発表されたGAKUさんの新作『Master of Ceremonies』について教えてください。
GAKU-MC デビューして30数年(ソロデビュー25周年)、まだ言いたいことがあって良かったです。特に今回は作り始めたのが2020年で。
ーーあ、コロナの‥。
GAKU-MC 最初のうちは自分が30年以上やってきた音楽が生活の役にたってない、って寂しい気持ちになりました。父としてこれでいいのか? とも。でも配信でライブが戻り、「音楽があって良かったです」ってコメントを読み、マスクをつけてでもお客さんが戻り‥いろんな感動があったんです。新作はそんな中で作られた作品なんですね。
ーーコロナという世界的な災害からの復興の中で生まれたわけですね。
GAKU-MC ですね。
ーーそういう歌たちがこれからも人々の支えになっていくことを願います。
GAKU-MC がんばります!
古谷 じゃ、ヒバ材のギターを弾いてもらいましょうか。
GAKU-MC (ギターを渡されて)あ、すごいいい匂い! 新築の家に遊びにいったみたいだ(笑)。(と言って何気に「take it slow」を弾き語りし始めた)
“‥音のしないCD 映らないTV‥take it slow ゆっくりと今日は語り明かそう take it slow 暗闇の中 キャンドルを灯そう”
(インタビュー/構成 今津 甲)
GAKU-MC https://linktr.ee/gaku_mc
MIFA https://mifa.co.jp/
MIFA Football Park https://mifafootballpark.com/
インタビュー後の2024年9月28日~29日で開催された「GAKU-FC サッカー合宿 in白馬 2024」では能登復興の思いを込めて 能登ヒバのアコースティックギターでライブをして頂きました。また参加された皆様に(※)香り袋(サシェ)をプレゼントしました。
※ 香り袋(サシェ) = 能登ヒバのかんなくずを詰めたもの。抗菌・消臭・アロマ効能を活かし、クローゼット・靴箱・楽器ケースなどに利用できる。
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