loading

ATENOTEは、創業100年以上、北陸随一の取扱い樹種と歴史をもつフルタニランバー株式会社運営の「地域材活性化プロジェクト」です。

サムネイル

同じゴールを目指す

ウクレレ奏者

ジェイク・シマブクロ

1976年、ハワイ州ホノルル生まれ。4歳の時からウクレレを始める。'02年、日本でメジャー・デビュー。ジャンルを超えた演奏が話題を呼ぶ。'07年映画『フラガール』のサントラ担当。日本のミュージシャンとのコラボやCM音楽、番組テーマ曲も手がける。一方でハワイ観光局のイメージ・キャラクターであり同地の音楽祭の常連受賞者。’24年にはUKロックのレジェンド、ミック・フリートウッドとのアルバム『Blues Experience』発表。'25年にはフジロックにも出演した。

ウクレレに選ばれた

今回はジェイクさんと通訳の方を介しての取材です。

ーージェイクさん、今年のフジロックに出演されたとき、客席にウクレレを振っている人たちがいたのに気がつきましたか?

ジェイク はい! みなさん、覚えてます。

ーー彼らは日本の木でウクレレをつくるプロジェクトを行っています。本日は、そのメンバーであるATENOTEを主宰する古谷さん、ウクレレメーカーのキワヤ商会 林社長に来て頂いています。

林 よろしくおねがいします!

古谷 はじめまして。 僕は木材屋なんですけど、ただ木を売るだけじゃなくて、その価値をより広く届けたいと思って楽器を作ってるんです。これまで30種類以上の楽器を作ってきました。

ジェイク いいですね。今日は日本の木の活動を知ることができるのでとても楽しみにしていました。ハワイでもそうですが、地球全体として資源の有効活用とサスティナビリティを考えて行動することが重要だと思っています。

ーー最初に少しだけ、音楽のことをお聞きしてもいいですか? ジェイクさんは普通の人がイメージするウクレレの演奏をはるかに超えたところでプレイし続けています。ギターであってもなかなか出来ないようなことを。そのモチベーションはどんなところにあるんでしょう?

ジェイク 小さい時、母がウクレレを、父がギターを弾いてたんです。幼いころから、そういう環境の中で「ウクレレを選んだ」というより「ウクレレに選ばれた」感じでした。それ以来、他の楽器に変えようとは思わなかったです。

ーーあの決して大きいとは言えないボディの隅々にまでフォーカス出来ているからこその演奏、という印象もあります。

ジェイク ウクレレって自分にとってはすごい興味の湧く楽器で、いろんなことを試したくなるんです。「こういうことをしたらどんな音が出るんだろう?」とか。で、常に新しいことにトライしようとしてるんです。

ーーまさに僕らは毎回コンサートにそのトライを聞きに行っている気がします。

ジェイク ありがとうございます。小さい頃、オータサン(ハーブ・オオタ。OHTA-SANの愛称を持つ日系2世。ウクレレの神様と呼ばれている)からもいろんなインスピレーションを得たんですよ。多才な方でハワイアン、ジャズ、クラシックまで弾いているんです。

ーージェイクさんのウクレレへのフォーカスは、使う木材まで及んでいるのでしょうか?

ジェイク 昔から使っているカマカ(ハワイの老舗ウクレレ・メーカー)とかはハワイ固有の木材でコアというのを使っています。やっぱりこの木の音が綺麗でとても好きなんです。高級な木なので家具にも使われています。

古谷 ハワイアン・コア以外で作られたウクレレは弾いたことありますか? 当然あるとは思いますが(笑)。

ジェイク マホガニー、エボニー、スプルース、シダー、曲げて加工するのが難しいような硬い木。箸にする木で作ったウクレレをもらったこともあります。あとはカーボンとかの合成素材。でもやっぱりコアが好きですね。スネーク・スキンのとかも弾いたけど。

ーー蛇の皮?

ジェイク 沖縄の三線にも使われていたようです。

古谷 ATENOTEでは能登ヒバという木でウクレレを作りました。フジロックでは、会場近くの森の木で製作してNGOヴィレッジという場所で展示販売していました。

林 NGOヴィレッジって、地球の問題を解決しようとする人たちが集まってフジロッカーのみなさんと一緒にその問題を解決を目指す場所なんです。我々は、そこで国産木材で作った“里山ウクレレ”を通して、日本の森を守っていこうという活動をしているんですよ。

ジェイク ハワイも問題を抱えてます。コアの森は激減してしまいました。原因のひとつは、外来動物の放牧で森は踏み荒らされ、固有の植物が大きな打撃を受けました。その後の保護活動によって絶滅は免れましたが、今も深刻です。だからこそ、多くの人々がボランティアとして、コアを守り育てる活動を続けています。 

古谷 そうなんですね‥。

ジェイク (スマホの写真を見せながら)これはハワイ島のハカラウ熱帯雨林(ハカラウ・フォレスト国立野生動物保護区)。背景に映っているのは30年前に植えたコアの木です。それが大きく育ちました。その前で僕はウクレレを弾き、友人の抽象画家、クリスティ・フジヤマ・コスミデスが絵を描き、その様子を動画で撮りました。みんなに自然やそこに住む動物たちへの関心を持ってもらうのに音楽を通して活動するというのはとても有効なことだと思います。

古谷 日本もハワイも森の課題を抱えていますね。

ジェイク 「バランスがとれた森」という同じゴールを目指すために一緒になっていかないといけないですよね。でも、みんなちょっとづつ気づいてきたんじゃないかな?ATENOTEのようなプロジェクトが立ち上がってることを思えば。

父も祖父も木を切っていた

ジェイク 実は、父も祖父も木にたずさわる仕事をしてたんですよ。

ーーなんと!

ジェイク 僕もやりたかったけど、父に「ノコギリを使うな。手を痛めるから」って言われてました。

ーー木を使うってところでは、おじいさんからずっと同じなんですね。

ジェイク そうなんです。だけど、ウクレレを弾く手が傷ついてはいけないと、工具に触らせてもらえなかったんです。父は祖父がノコギリで指を怪我してたのを見てたから。

ーー木を切ると言えば、ATENOTEではギタリストを森に連れて行ってこれから自分のギターになる木を選んで、その伐採を見ていただく、という企画をやったことがあります。

ジェイク すばらしい。

古谷 木材屋として毎日、板を見ていますが丸太を見ることはあまりありませんでした。まして、林業の現場や森に行くこともありませんでした。このプロジェクトで初めて目の当たりにしたんです。

ジェイク なるほど。

古谷 楽器販売の方やミュージシャンも、楽器は知っててもその元となる森の木は見たこと無い方が多いので、森にお連れしています。そうすると、ミュージシャンは影響を受けるし、楽器屋さんは売り方が変わる。僕も木への想いがより強くなりました。現場に行って木の価値をみんなで共有することが大事だと思います。

ジェイク さっき言ったハワイ島の熱帯雨林へ行ったときはすごく驚きました。そして森とのつながりを持つことができました。実際に行くことはとても大事だと思います。

ーージェイクさんも影響を受けましたか?

ジェイク コアの森の自然に囲まれて、コアで出来たウクレレを弾くと鳥が鳴いていたりして、人工的な音はなにも聞こえてこない。この体験はアーティストとして世界観が変わりました。それに森林は私有地なので、通常は一般の方は入れないんですよね。とても貴重な体験でした。おそらく、同じようにギタリストの方も山に入ってその大きな木を見て、「これから自分が弾く楽器はこの木から作られるんだ」って思うとおそらく想いが違ってくるでしょうね。

ーーお話をきいてジェイクさんの背後にあるものを感じられた気がします。

ジェイク ありがとうございます。同時に、アーティストとしてこの楽器を作るには犠牲が伴ってるんだっていうことも忘れてはいけないと思いますし、そこに気づくことも大事だと思います。

ーージェイクさんには国産木材のウクレレ、弾いていただいたんでしたっけ?

林 はい、今回お持ちした能登ヒバと、フジロックの森(FUJI ROCKERS FOREST)で作ったウクレレは弾いてもらったと思います。

ジェイク すばらしいウクレレでした。あれ、なんて木でしたっけ?

古谷 スギです。英語ではジャパーズ・シダー? フジロック・シダー(笑)。

ジェイク フジロック・シダー! 

古谷 日本はスギが多いんです。戦後にたくさん植えたスギが50年~60年経って使う時期に来たんですが、時代の経過とともに日本の木材が使われなくなり、手入れをする人も少なくなっています。なので新しい使い道を見つけるために楽器プロジェクトを行っています。

ジェイク なるほど!よくわかりました。スギやヒバはサスティナブルなんですか?

古谷 「切って・使って・植えて・育てる」っていうサイクルをバランスよく守ればサスティナブルです。でも日本は今「使う」ってことが足りていません。ハワイの木は減っていますが、日本の森はどんどん増えてるんですよ。もっと使わないといけないんです。

ジェイク そうなんですか。ハワイと状況が違うんですね。 

古谷 それに日本はどの地域でも同じ課題を抱えています。ウクレレの良いところは、部材に様々な木を使えることなので、いろんな地域の木材でチャレンジしています。石川県能登地方の能登ヒバ、京都の北山スギ‥。

左から 北山スギ(京都)、フジロックの森のスギ(新潟)、能登ヒバ(石川)

ジェイク 京都のスギ!

林 そしてフジロックの森のスギ。

ジェイク トップ材の模様がおもしろいですね。

林 冬に雪が積もって木が曲がるからこのようになるんです。

ジェイク なるほど!

古谷 それと日本には四季があって木にも夏目と冬目があります。暖かい地方の木は木目が広く、寒い地方は目が詰まってる傾向があります。

ジェイク 地域で異なるんですね。ハワイは四季がありませんから。

古谷 これらの日本の木が海外でも使われるようになれば、と思ってます。

ジェイク いつかハワイでウクレレ・オーケストラを作って日本のウクレレを弾いてもらうのも良さそうですね。そういえば今度の日本公演で、玉川学園の生徒6名と一緒に演奏するんです。12歳から17歳くらいの子だったと思います。このプロジェクトのことも紹介したいです。

古谷 うれしいです!

ジェイク 彼らのウクレレは校庭で老朽化により伐採された木で作られてるんですよ。それがきっかけで練習をし始めたと聞いています。  

古谷 その木はきっと処分される予定だったのが、新しい命に生まれ変わったということですね。是非こういったプロジェクトとも合流したいです。

ジェイク 木や資源の有効活用は、世界中に必要な取り組みです。これからも他の国や地域にも広がっていくことを願っています。

インタビューから数週間後の10月17日、「JAKE SHIMABUKURO ASIA TOUR 2025」の六本木EX THEATER公演を観戦。それは全くオリジナルな世界だった。よくぞウクレレからこんなにも繊細な表現を!と思わせるインストが要所要所に配置されていた。一方で根っからのロック好きギタリストがウクレレに持ち替えたかのようなナンバーも多々あった。その中で1曲、玉川学園の生徒さんたちが登場。全員がウクレレを弾きながらかつ英語で歌う、というこれまた意表をつくスタイルで。

終演後、生徒さんの代表から話を聞いた。自分たちはウクレレを学びたい校内の有志であること。同学園では以前から、校内で切らざるをえなくなった木を再利用するプロジェクトがあること。今回はそれはウクレレで、インストラクターの先生の手を借りつつも、最後は自分たちの手に馴染むように加工していったらしい。彼女たちのウクレレ歴は様々だが、ジェイクさんのお声がかりで揃ってステージに出ることになったのだとか。

「フラダンスで聴くウクレレとは違う」「ウクレレから出る音というよりはジェイクさん自身の音」と口々にジェイクさんのプレイを表していた彼女たち。来年春にはハワイに出向いて現地の学生と交流。「さくらさくら」をウクレレで披露するそうだ。ここにも木を通じた確かな繋がりがあった。

(インタビュー/構成 今津 甲)

ジェイク・シマブクロ https://www.jakeshimabukuro.jp/

NGOヴィレッジ https://ngovillage.net/

フジロックフェスティバル ’25出展記事 https://atenote.com/act/2147/

国産木材ウクレレプロジェクト・・・木材屋のフルタニランバー、メーカーにFamousブランドを展開するキワヤ商会、製造を手掛ける三ツ葉楽器、販売のイコレレ、奏者として「デイジーどぶゆき」さんや「上村さや香」さんなどの連携チームで構成されている。2024年、2025年のフジロックフェスティバルのNGOヴィレッジに出展した。

プライバシーポリシー
フルタニランバー株式会社(以下、「当社」といいます。)は、お客様からお預かりした個人情報を保護するため、個人情報に関する法令及びその他の規範を遵守いたします。
個人情報の取得
当社は、不正な手段を用いて個人情報を取得しません。
また、他者が不正な手段で収集した情報の取得も行いません。
個人情報の利用目的
当社は、お問い合わせフォーム、またはメールで、お客様からの各種お問い合わせを受けます。
この際、回答や連絡のための情報(お名前、郵便番号、メールアドレス等)を求めます。
このような形でいただいた情報はご質問、ご意見に直接お答えするために使われます。
個人情報の開示
取得した個人情報は、お客様の事前の同意なく第三者に対して開示することはありません。
ただし次の場合は除きます。
  1. 法令に基づく場合
  2. 人の生命、身体及び財産の保護のために緊急の必要性がある場合
  3. 協力会社と提携して業務を行う場合。(協力会社に対しても適切な管理を要求します。)
  4. お客様の自己の情報について紹介を希望される場合、所定の手続きに基づき開示します。
  5. その結果、誤りなどを指摘され、削除または訂正を希望される場合は、これに応じます。
変更および通知について
当社がプライバシーポリシーを変更する場合、この変更について当サイトに掲載いたします。
それにより、当社のプライバシーポリシーがどのような状態であるかを認識し、受け入れているものとみなします。
個人情報管理責任者
当社の個人情報管理責任者は下記の通りです。
会社名: フルタニランバー株式会社
電話:076-238-5633