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ATENOTEは、創業100年以上、北陸随一の取扱い樹種と歴史をもつフルタニランバー株式会社運営の「地域材活性化プロジェクト」です。

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命を頂いて音を出す

ギタリスト

村治佳織

幼少の頃より数々のコンクールで優勝し、15歳でCDデビューを飾る。2003年英国のDECCAレーベルと日本人初の長期専属契約を結ぶ。第5回出光音楽賞、村松賞、第9回ホテルオークラ音楽賞、日本ゴールドディスク大賞を2回など受賞歴多数。テレビ、ラジオなどメディア出演も多い。2021年5月、吉永小百合主演映画「いのちの停車場」のエンディングテーマを作曲・演奏。2023年10月、デビュー30周年を記念してファン投票による人気楽曲を収録したベストアルバム『CANON』をリリース。2024年世界的英バンド・Coldplayのアルバム『Moon Music』に参加。2025年10月17日、最新アルバム『Eternal Fantasy』をリリース。

ギターは同志

ーーまず普段から木を意識していたりしますか?

村治 都心に生まれて都会育ちなのですが、緑のある所に行くのはすごい好きです。たまに早起きして神社に行って木々の葉っぱの1枚1枚を見たり。以前、ギター製作家の方を訪れたときは、ギターになる前の1枚の板を見て「あ、ここからなんだなあ」と思ったり。木なしでは楽器も成り立たない。命をいただいて音を出せていただいてるんだ、といういうのはいつも頭のどこかにありますね。

ーー今回、能登ヒバのクラシックギターを作った河野ギター製作所の君島聡さんにもお越し頂いています。

君島 よろしくおねがいします。

古谷 わたしが君島さんと知り合ったのは、能登ヒバ楽器プロジェクトを始めて間もない頃で、「どんな楽器に使えるのかな?」って探ってる段階でした。その中で君島さんと出会ってまず言われたのは「柾目材、その中でも極上モノを用意して欲しい」でした(笑)。

君島 クラシック・ギターはもともとスペインの楽器で使える材料も決まっていた。でも僕は日本人としてこの国で生まれたからには、日本人ならではのギターを作りたかった。ただ材に関しては「使いたいから使う」んじゃなく「良いから使う」でないとダメだと思うんです。で、最初に持ってきていただいたのはちょっと‥だった(笑)。

村治 見た時にわかるんですか? どんな音になるのか。

君島 木目や硬さでなんとなく。

村治 それが初めての国産材だった?

君島 過去には吉野杉で作ったこともあるんです。それはさっそく何人かのギタリストがメイン楽器に使うぐらい評判が良かった。そこで日本の材も探せばいいものがあるって気づいたという。

河野ギター製作所 君島聡さん

村治 私の意識では松か杉がギターの表面板によく使われているというのがあるのですが。

君島 あー、日本で言う杉とこれまで表面板に使われてきたレッドシダー(米杉)は全く別の木なんですね。さらに言うと日本のレッドシダーは中国では松と言われていたり。

村治 えーっ!

ーー笑ってしまうぐらい違うんですねえ。

古谷 そういう意味でも日本のスギを楽器に使うっていうのは中々無いことだと、思いますね。

君島 日本の固有種なんで。

古谷 スギは早く成長するんで高度経済成長期にたくさん植えられたんです。住宅用として。中でも吉野杉なんかは手間をかけられたブランド品で。

君島 もともとは天井板なんかに使われてましたからね。でも住宅事情が変わって行き先がなくなってきてしまった。それで奈良県が調べて楽器に適してるってことがわかって。奈良のギター製作家の丸山利仁さんという方ギター材に使い始め、僕にそれを紹介して頂きました。

古谷 すばらしいチャレンジですね。吉野杉、自分も好きです。

村治 私、たまに吉野杉の酵素浴に行っています(笑)。

ーー能登ヒバもアロマになったりしていますね。

古谷 ヒバは香りもいいので。

村治 で、話はヒバに戻る(笑)。

君島 ギター材のなにが難しいって、そこに使われる木の年輪の細かさは素人さんでも分かる。そこが価値になる。最初にいただいたものはそこがちょっと、だったんです。

古谷 で、どうしようかなーって悩んでいたところに村治さんの話が入ってきた。さらに、いつもお世話になってる製材所の方が実は村治さんのことを大好きで「がんばるよ。極上のもの探すよ」って言ってくれたんです。

君島 村治さんのおかげで。

村治 いや、そういう土壌があったから

ーーみなさんのおかげですね。

村治 そうです!

ーー村治さんはギター自体のこと、どんな見方をしてるんですか?

村治 「あ、顔つきがいいな」と思うことがあります。その理由の一つは、木目やサウンドホールの美しさにあります。そのことを初めて自覚したのは高校生のときでした。あるコレクターのお宅におじゃまして10台以上のギターを目にした際のことです。その中に作られてから年月はたってるけどまだ誰も弾いてないギター、ロマニリョスがありました。それが私のメイン・ギターになり、一緒に育っていった感じ。弾きこんでいくと、より自分が求めていた音になっていき、一緒に外国も行く同志のようなギターです。そして今回、初めて私のために作ってくださったヒバ材のギターを見た時、ロマニリョスを思い出しました

ーー製作の際に村治さんの方からの要望などは?

村治 河野ギターの君島さんが作るということでただ安心していました。私の父(村治昇)も河野ギターさんにお世話になっていましたし、私も使っていたので。

受け皿を大きくしておきたい

ーー能登ヒバ・ギターを迎えるにあたってどんなお気持ちでした?

村治 これまではスペイン人のものと、アメリカ人が作ったオールマイティーなギターをメインに使っていました。今回はそこに新たに意義が加わっていて、復興支援でもある、という新たなギターとの出会いに加え、社会的貢献ができるのであればそれ以上に嬉しいことはないと思いました。

ーー東日本大震災のときもガラスのギターを披露されていましたね。

村治 あれはハリオ・ガラスさんが、震災で止まってしまったガラス炉を直すところからやってくださって、それも感動的でした。

(参考URL:BARKS https://barks.jp/news/686334/ )

ーーそれが今回はガラスから木へ。

君島 作り始めたのが地震の直後ぐらいでしたからね。

古谷 村治さんがおっしゃっていただいたようにさらに意義が加わりました。製材所も甚大な被害を受け、能登で木を切る人も減ったので。一方で県外から「能登ヒバを使ってみたい」って声はあるんだけど、いまは沢山の量を捌けない。だったら少量で価値のあるものを、ということでますます使い道は楽器がいいんじゃないかと思ったんです。そして人をつなぐ音楽の力。先ほど触れた村治さんのことを大好きな製材所の方。その方も被災して傾いた家に住みながら「復興のためなら」「村治さんのためなら」とがんばってくれました。完成して音が出たときどう思いました?

君島 普通のクラシックギターとは違う音が出たんで良かったと思いました。もともと違うことをしようと思っていたんで。これを村治さんが手にしたとき、新しい扉を開ける楽器になるといいな、って。

ーー普通のクラシックギターとは違う音。それを言語化すると?

君島 それが難しい(笑)。

古谷 村治さんは事前に試奏いただいた時、「お母さん的なサウンド」って言ってましたよね。

村治 優しい、つつまれるような印象を受けました。今の音は、色で言うとパステル・ブルーみたいな感じです。

君島 それは、裏横板に使ったミズメという木の特性だと思います。音を前に飛ばすというよりはフワッとした感じになります。ギターってどんどん音が変わって、基本的には柔らかくなっていくので、表面板のヒバ材とかは、少し硬めに作ってます。なので、ある程度弾き込んだ後に、馴染んで丁度よい音になっていくと思います。 

村治 何年かして初めてステージで使えるようになる、というのは私も感覚としてあります。

ーーお手元に届いたギターはその後、どんな日々を送っているんですか?

村治 我が家にやってきたのが6月。8月の大文字焼きの時に京都でホームパーティーがあったので「デビューはこれだ!」と思って3曲演奏しました。弾く前に「今日がデビューの子です。これは能登の木も使っています。みなさんが聴いてくださることで応援にもなります」と紹介して。そのあとまた家で弾いていると音が喜んでるような気がします。

古谷 嬉しいです!

村治 君島さんは演奏家のことを思って作ってくださって、私はお客様のことを思って弾く。循環していますね。

古谷 今後はどうなるんでしょうね?

君島 ここ1~2年で相当音が変わっていくと思うんで、その都度合う音楽を柔軟に感じ取っていただいければ。

村治 弾けば弾くほどいいのか、そのへんの匙加減はどうですか?

君島 たぶん最初の1-2年は弾けば弾くほどいいと思います。今まで抑えられていた木の繊維をほぐしていく。

村治 いつかどういう曲をこれで弾くのでしょうね。

君島 最近、いろんなことに挑戦されていますよね。ゲーム・ミュージックとか。

ーーそのアルバム『Eternal Fantasy』から、この取材の時点でストリーミングで聴けた曲の中にファイナルファンタジーの「Tifa’s Theme」がありました。ちょっと乾いたかんじのアレンジとギターの組み合わせがめちゃくちゃかっこよく、続けて3回聴いてしまいました(笑)。

村治 ありがとうございます!

ーーそれと、普段インタビューするのはロック、ポップス系の方が多いんですね。このATENOTEのインタビューも同様。だから村治さんの演奏もついベース、コード、メロディーみたいな聴き方をしてしまった。そしたら、一人の方が同時に奏でているにも関わらず3つの要素がそれぞれに個性を持って聴こえてきて、その表現の深さに驚かされました。

村治 おっしゃるようにそこは常に意識しています。自分が司令塔で1人じゃないかんじを、表現できるようにしています。

ーー活動の幅も1人じゃないかんじですが(笑)。

村治 自分からいろいろやっているように思われるのですが、どれも周りから「こういうのはどうですか?」と言われたところから始まっています。そういう時のために受け皿を大きくしておきたいな、と思いますね。一人間としてこの世での生活を楽しんでいれば、思いもよらないボールが投げかけられることもある。そういうときに「こわい」「できない」じゃなくて「いいですねえ」って。このヒバ・ギターもそのひとつですね。

(インタビュー/構成 今津 甲)

インタビュー後、2025年9月23日にJFN系局「レコレール」で特別番組が放送されました。

【放送概要】

◆番組: 『レコレール Holiday Edition ~Sound of the Forest~』

◆放送日時: 2025年9月23日(火・祝) 13:30~15:55 

◆放送局: JFN系列 28局予定

◆HP:https://audee.jp/program/show/300004982

◆番組X:  https://x.com/recorrer_jfn 

【ネット局】FM青森、FM岩手、FM秋田、FM山形、ふくしまFM、FM GUNMA、FM栃木、interfm、FM長野、FMとやま、FM石川、FM福井、FM GIFU、FM三重、FM滋賀、FM山陰、FM岡山、広島FM、FM山口、FM香川、FM徳島、FM高知、FM佐賀、FM長崎、FM熊本、FM大分、FM宮崎、FM鹿児島(全28局)

村治佳織 http://www.officemuraji.com/

河野ギター製作所 https://www.kohno-guitar.org/

製作したギターの詳細 https://atenote.com/lineup/classicguitar/

[リリース情報]

村治佳織『エターナル・ファンタジー』2025年10月17日発売

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