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ATENOTEは、創業100年以上、北陸随一の取扱い樹種と歴史をもつフルタニランバー株式会社運営の「地域材活性化プロジェクト」です。

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僕ら人間も、もともと植物だった

ACIDMAN ボーカル/ギター

大木伸夫

1977年生まれ。埼玉県川越市出身。高校時代の友人と共にACIDMAN結成。大学では薬剤師の免許取得。2002年メジャー・デビュー。現在までに12枚のアルバムをリリース。ライヴでは武道館公演通算6回、さいたまスーパーアリーナにて2回、フェス『SAI』を主催している。一貫して宇宙や生命のことを歌いつづけ、環境問題にも関心が深い。

木材は年を経てさらにかっこよくなっていく

ーーそもそも大木さんの身の回りには木製のものが多いですよね。バンドでDIYして作ったプライベート・スタジオも木をふんだんに使っているし、ご自宅のオーディオ・セットや家具なんかもウッディーなものが中心で。

大木 名前も大木というぐらいで(笑)

ーーしかも伸夫(笑)。まずはそういうご自身の、木との距離感についてお聞きしたいんですが。

大木 木に対するリスペクト、というのは子供のころから根付いていると思いますね。

ーー自然豊かな環境で生まれ育ったとか?

大木 生まれたのは埼玉の川越なんです。

ーー蔵造りの街並みで有名な‥。

大木 まさにあの付近の生まれです。すごく好きな街なんですけど、それが自然と関係あるわけではないですね。

ーーではなにが?

大木 「自然と共に生きれない僕たちは‥」みたいなことを考える少年だったんです。『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』もそんな僕の心とシンクロしました。小6の時、『はてしない物語』(ミヒャエル・エンデ)の読書感想文で賞をいただいたんですけど、その中でもけっこう生意気なことを言ってるんです。

ーーどんな?

大木 〝CO2のせいでこのままだと地球温暖化で‥〟とか。そういう問題意識は当時からずっとあって。

ーーそこに〝木〟のことはどうからんでくるんですか?

大木 僕たち人間は、なぜか木というものを自由にあやつれるかのように考えている。でも、子供ながらに「いや、ちょっと待てよ」と。「動かずその場にジッとしたまま生を全うできるって、人間よりはるかに素晴らしい存在じゃないか!」と思ってそこから調べだしたら、僕ら人間ももともと植物だった、ということが分かったんです。

ーー僕ら人間も?

大木 ミトコンドリアですね。葉緑体から枝分かれしていって人間になった。とすると僕らはやはり、自然と共に生きないといけないんだなということが分かった。

ーーちなみに宇宙好きのルーツはなんだったんですか?

大木 小3のとき父親から「宇宙には果てがないんだよ」と言われたひとことからウワーッと広がって。

ーーまさにビッグバンのように、ですねえ。バンドでは20年以上も宇宙や生命をテーマにした歌をうたい、その間、南米のアルマ天文台でミュージック・ビデオを撮り、宇宙飛行士の油井亀美也さんと語り、プラネタリウムの番組を担当し‥。

大木 子供のころから考えることがファンタジーだったけど、宇宙のことを調べるともっともっとファンタジーだったんです。

ーー木の話に戻りましょう。意識して木製のものを選ぶようになったのはいつごろですか?

大木 大学1年で初めて一人暮らしをしたとき、同級生の親がやってる木材屋さんで枕木を2本買ったんです。それを洗って茶色にスプレーして棚にした。最近まで使ってたんだけど、あれから木の質感が好きになったんだと思います。

ーー木の質感、どんな部分に惹かれます?

大木 年を経てさらにカッコよくなっていくところですかね。家にあるハンス・J・ウェグナーのオリジナル・ビンテージの椅子とかも、チークがどんどん艶々になって、まるで美術品のようで。

ーーたしかに木以外で、経年変化で美しくなっていくものってそうそうありませんよね。

大木 ですよね。レザーもある程度たつと弱くなっていくし。木のように長く耐えうる、ずっと使えるものが好きなんです。

ーー長く耐えうる。そのワードを地球にあてはめると、どういうことになります?

大木 僕は最初、性悪説だったんです。こんなにも地球を汚している人間は悪である、と。なので思春期のころは「人間なんて滅んでしまえ!」と思っていました。でもデビューして数年経ったころ「そんな想いを世の中に届けてはいけないな」と考えて、性善説に変えた。もっと人間のいいところを信じよう、と。

ーーいいところを信じれるような状態にしていくことは必要ですよね?

大木 そうですね。地球自体はそんなにやわじゃない。人間が地球をコントロールするどころかあっという間に僕らは絶滅させられてしまう。太陽が何日かいなくなっただけで地球はスノーボール・アース(全地球凍結)っていう状態になったりして。でもそれですら地球のごく表面の出来事。だから僕らは、地球のこと以前に自分たちにフォーカスして、自分たちがここに住み続けるためにはどうしたらいいか? を考える必要があるんです。

ーーまず人間は人間のことを考えろ、と。

大木 はい。そしてどんな時代であっても命をまっとうする。あえて命を燃やそうとするのではなく、誰でも燃えている命を全うする。だぶんそこが僕が発している一番のメッセージだと思います。

ーー誰でも燃えてる、んですね。

大木 そう。だから生きてさえいれば全員目的達成中。そう思っていれば他者を攻撃したりすることのナンセンスさに気づくかもしれない。とはいえ全員がそうなれるわけじゃないので、まずは自分の命というものを最後の最後まで輝き尽くす、と。

ーーライヴのMCでも常に「明日はないかもしれない。だから今を精一杯生きましょう」と話していますね。

大木 未来も見たいし過去も行きたい。でも悔しいけど無理。だから今あることの有り難さを感じよう、ということですね。

いいものは値段が高くて当たり前

ーー宇宙や地球、そして人間のことは人一倍見つめていらっしゃると思います。ご自分が愛する木を生む林業、についてはいかがですか?

大木 それに関してはぜんぜん知識がないんです。ただ最近、急に木材の値段がめちゃくちゃ上がっていてびっくりしました。日本の木は余ってると聞くし、いったい何が起こってるんですか?

(ここでこのサイトを運営する古谷社長登場)

古谷 日本の木材の自給率って、戦後すぐは90%を超えてたんです。でも外国から太くて安い木材が入ってきたせいで、どんどん下がっていった。ついには20年ぐらい前、18%まで落ち込んだんです。いまは40%ぐらいまで戻ってきましたが。

大木 おー、そうなんですか。でもウッド・ショックというのがあったんですよね?

古谷 そこは繋がってるんです。コロナ中、これまでバケーションにお金を使っていたアメリカ人がDIYに使うようになった。彼らのDIYって日本とはぜんぜん違って自分たちで家1軒建てるぐらいの規模なんです(笑)。で、アメリカ国内の木材の需要が急速に高まって日本に入って来なくなった。そこで向こうに買い付けにいったんだけど日本人って買い叩き気質だから(笑)セリ負けちゃって。それで国内材を使わざるを得なくなったんです。

大木 それでなんで日本の木材も高くなるんです?

古谷 アメリカに便乗して高騰したんです。でも、僕らにとっては、それで適正に近づいたかんじなんですけどね。

大木 そうなる以前は安すぎた?

古谷 直径30cmぐらいで長さ4mの杉の丸太、1本いくらぐらいだと思います?

大木 30cmで4m‥10万円ぐらい?

古谷 3千円です。

大木 えーーー!

古谷 1本の木が直径30cmになるには40年は必要でその間、親子2代ぐらいにわたって世話をして、ようやくそれを切って市場に出したら1本3千円。

大木 安すぎる!

古谷 だから「国産材で楽器を作れないか?」って思ったんです。木材ってこれまでは大量に手っ取り早くさばけるから安くても建築に使われてきた。でも楽器に使うような木はもっと価値が高い。そういう需要があれば木を切る人も、もっと張り合いが出る。

ーーああ、木を切る人も!

古谷 現状はみんなそれが何に使われるのかわからないまま、指定された本数を切ってるんです。雨の日も、雪の日も。それが「ギターを作るからこの木を切る」ってなったらすごく健全だと思うんですよね。大木さんも一緒に山に行って「じゃあ、この木でギター作りましょうか?」とか出来るんですよ。大木 すごいなー、それ!

古谷 そうやって川上の木こりさん、川中の僕ら木材生産者、川下のメーカーや楽器店、その先にいるミュージシャン。すべてと繋がっていければ、と思ってるんです。需要が増えて森が整備されていけば熊が人里に出てきて処分されるようなこともなくなるし。世界的に森林面積は減少してる中で日本は増えてるんですけどね。整備する人がいないせいで。

ーー日本の森林率はあの森と湖の国・フィンランドに続く、と読んだことがありますが、そういう側面もあるんですね。森との付き合い方は日本とフィンランドじゃ違うのかもしれないけど。

大木 フィンランドでは子供が生まれたときに庭の木に名前を彫って、その子が亡くなったときも大きくなった木に残る名前を見て故人をしのぶ習慣があるらしいです。

ーー息が長いものに価値を見出している感、ありますねー。

大木 商売にしても、欧米人は長く使えるいいものをいかに高く売るかを考えるのが得意で、逆に日本人は、いかに安く売るか、ですよね。。古谷さんの木材の話じゃないけど、僕も昔はチケット代にせよTシャツにせよ「安く、安く!」って思ってたんですよ。先輩たちの世代もそうでしたし。でもそれをやってるとお客さんはそれが当たり前だと思うようになって、結果自分たちの首をしめてしまう。だから今はたとえばTシャツにしても質が高くて長く着てもらえるようなものを、それ相当の値段で売るようにしています。そこはライヴも同じ。「自分の音楽なんだから安売りは出来ない!」ということをはっきり言えないとだめだと思うんです。

このギターはいい! ここで鳴っているのがすごく良く分かる。

ーーギターの話にいきましょう。大木さんはこれまで、ギターの材についてどれくらい意識してきました?

大木 いや、ほとんど意識してないですね。エレキの場合、木だけの問題じゃないし。ローズウッドでもなんでも弾いて明確に音が違えば気にしますけどね。家具とかと違ってギターはトータルで弾くやすく音がよければいい。ギターの場合、基本的には木が乾燥していることが大事ですね。

ーー高価なビンテージ・ギターは十分に乾燥してるゆえいわゆる〝枯れた音〟がしたりします。時にはさんざん使われて色んな所の塗装が剥げたような奴が。

大木 ギターを買うときはいつも新品を買ってます。さっき言ったように、自分が使うことで新品がビンテージになっていくのが好きなので。

ーー大木さんは一つの楽器を長く使うことでも有名ですが、しかもどれもそんな高価なものでもないですよね。

大木 リッケンバッカーが20年前で15~16万、テレキャスターが25万ぐらい。ずっと使ってるのでとっくに減価償却は終わってます(笑)。

ーーこの取材にさきだって、能登のヒバ材を使ったギターをプライベート・スタジオにて試奏していただきました。それが好評だったとか。

大木 いやほんと、すごい良かったんですよ。もういちど弾かせてもらえます?(と撮影用に用意された貸し出し時と同じHeadwayのアコースティック・ギターを受け取る。さまざまなACIDMANのナンバーを弾いて)うん、やっぱりいいなあ! (抱えたギターのあたりの空間を指して)ここで鳴っているのがすごくよく分かります。

ーー鳴り=よく響くかどうか、というのは特にアコースティック・ギターでは最重要のポイントですよね。

大木 あとギターで重要なネックの握りやすさ。これはネックの幅といい、厚みといい、仕上げといいすごくいい!

ニスの仕上げのかんじとかもね。これ、いくらぐらいなんですか?

古谷 マスタービルダー(ギター工房のトップ・クラフトマン)が作ったものなので60万ぐらいです。

大木 そりゃあいい音がするはずですね。新しいのが出来たら僕にも使わせてください。レコーディングで弾いてみたいし。で、良かったら買いたい。アコギはいっぱい持ってるしすぐには買えないけど、その値段を聴いてよけい欲しいと思いました。

ーーあ、逆に?

大木 今日出たモノの価値観の話じゃないけど、実際に音がいい上に作り手が60万っていうんなら絶対にそれだけの価値が保障されてると思うんですよ。

ーーでは最後に、1本の木がこのギターになるまでの流れを支えるさまざまな林業関係の方々に、なにかメッセージをいただけますか?

大木 僕がえらそうなことは言えないですけどね。でも木を愛する人間として、たとえば家にあるジョージ・ナカシマのテーブルは月に1回、ラナパーというクリームで磨いてるんです。磨けば磨くほどツヤが出るんですけど、それはもう木と対話しているようなもの。年齢で言えば向こうの方が圧倒的に大先輩で、その大先輩が生きた証を使わせていただいている。それはとても心地いいことなんですね。誰かが必ずその木を手にとったり、その木に守られたり、その木に温められたりしている。そういうことを想って、これからも林業にとっていい未来があればと思います。

(インタビュー/構成 今津 甲)

ACIDMAN website http://acidman.jp/

BARKS記事 https://www.barks.jp/news/?id=1000244890

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