すべては人の繋がり
故郷は沢山ある
古谷 能登の支援、ありがとうございました!
TOSHI-LOW 古谷の会社が派遣したトラック部隊の人がすごくよくしてくれて。気が効くね、あの人たち。
古谷 自転車トークで盛り上がったって言ってました。うじきつよしさんも来られていたそうで。
TOSHI-LOW そう。チャリやトライアスロンやってるチームの人たちを連れてきていて。で、盛り上がっていたらそのうちの1人が(地震で全焼した)朝市と道一本へだてた家の人でさ。もちろんその家も半壊。そんな人がビーチ・クリーンに参加して、オデコが日焼けして2色になってた。「そんな日焼けの仕方したら支援うけられないよ」って言ったら、ゲラゲラ笑ってたけどね(笑)。
古谷 よかったですね、笑いが戻って。
ーー古谷さん、そもそもTOSHI-LOW さんとはどうやって知り合ったんですか?
古谷 まず(OAUのパーカッションの)KAKUEIさんとご縁があったんです。能登ヒバで作ったパチカを使っていただきたいということで。そしたら、それを製作してくれた所がTOSHI-LOWさんの弟さんのお知り合いの店だったりもして。
TOSHI-LOW 茨城の加藤木工ね。
古谷 実際にお会いしたのは今年の1月、ビルボード東京でのOAUのライヴ。能登の地震の直後だったんでどうしてもTOSHI-LOWさんにお会いしたくって。
ーーその時の古谷さんの印象は?
古谷 変な奴が来たなってかんじでした?
TOSHI-LOW やりたいことがある人って自分のこと語るよね。あの時も「また熱いの来ちゃったなー」って思ってた(笑)。
古谷 地震の直後だったから余計そうだったかもしれない。でもすぐに「能登で困ってるんなら教えてくれよ」って言ってくださって。で、能登島で「山水荘」って民宿やってる石田さんに連絡したら「本当に困ってるからぜひ来てほしい」ってことになり、BRAHMANが1月に金沢のvan van v4でライヴをやったタイミングで、島の避難所の子どもたちに支援物資を届けていただいて。
ーーその後も継続してさきほどのビーチ・クリーンまでつづくわけですね。
TOSHI-LOW 古谷のことは信頼してるから。その人のことはその人の周りを見れば分かる。彼が派遣してくれたトラック隊。あの人たちの動きを見てもね。それは友達とかも同じ。その人だけ良くて周りが悪いとか絶対ないから。いい人にはいい仲間や部下がいる。1人と1人の付き合いではウソもつけるけど、周りまではウソはつけないから。
ーーTOSHI-LOWさんは全国の被災地で活動されてますが、その多くは今回のように人と人のつながりからのスタートなんですか?
TOSHI-LOW それ以外ないね。まったく縁がない所には行けない。土地勘もない、人との繋がりもない所に無理くり入っていっても迷惑かけるだけだから。事が起きる時は必ず今回のように点と点が結びついて歯車が回りだす。
古谷 もともと石川県にも再生大学に関わりのある「バカビリー」さんという方がいたり、羽咋(はくい)市の妙成寺には「大森 教生」さんという和尚さんが、5月にOAUのライヴを開催したり。
TOSHI-LOW 日蓮宗のね。北陸は浄土真宗が強いんだけど立派なお寺だったね。五重塔とかもあって。
古谷 僕はそのライヴを観に行って、教生さんと知り合うこともできた。TOSHI-LOWさんを通じて同じ県民同士が繋がっていくかんじです。
TOSHI-LOW えてして同じ地域の人って普段は仲良くないから。
ーーですかね?
TOSHI-LOW だって隣の中学のやつとか嫌いでしょ?
ーー真っ先にケンカの対象になりますね(笑)。
TOSHI-LOW そこは全国どこでも同じ。それが災害があったりするとそんな自分たちの内側を見直す機会になる。
ーー災害が自らを映す鏡のような役割を果たして?
TOSHI-LOW ほんと、そう。それにこんなことになったからこそ、オレは能登半島の良さを知ることになった。素晴らしい山や海がある日本の原風景みたいな場所のことを。
ーー以前このインタビュー・ページに出ていただいたフジファブリックの加藤さんも、金沢出身ながら能登はほとんど行ったことがないとおっしゃってました。
古谷 そうなんですよ。地元にいてもなかなか行かない。
TOSHI-LOW そこの出身だからよく知ってるか、っていったらそうじゃないよね。でも実際に触れ合ってみるとそれぞれの地域にすごい人がいて、その人たちと知り合うと自分にとってそこが故郷のような気がしてくる。
ーー全国で活動されてるわけですから、故郷がいっぱいあるようなものですね?
TOSHI-LOW ほんとに。なにやっても、どこに行っても、恵んでもらって生きていけると思ってる(笑)。そういう中で今回、古谷と知り合って、また知り合いが増えた。しかも今度は林業だっていう。
木はいい教材
ーーTOSHI-LOWさんはギターもドラムもプレイされますけど、楽器を通して木を意識するようなことはあります?
TOSHI-LOW これで本当のギタリストとかだったらメイプルがどうのとかあったんだろうけど、俺にとって木は「硬ければケンカに使える」ってぐらいなもんで(笑)。
ーー試奏ではなく試硬の結果?
TOSHI-LOW プレベ(プレシジョン・ベース)が硬いんだな、っていうのは分かって(笑)。
古谷 こだわりの家具、とかはどうですか?
TOSHI-LOW 俺、モノにこだわりないからねー。ただ木っていうより自然。大人になってくると人間も自然の一部だって気付いてくる。だから初めて能登に行ったとき「なんでこんないいとこ知らなかったんだろう?」って思ったわけで。木に興味があるかないか、っていう前にあるに決まってるんだよね。
ーーそれも自然の一部だから?
TOSHI-LOW そうそう。だからここにいるし、今後は木を使ってどうしよう? って話になっていくだろうし。そこが楽しみ。
古谷 (机の上のコーヒーを持って)こういうコーヒーも木で作ったり出来るんですよ。
ーーコーヒー豆の代わりに何かを使って?
古谷 クロモジっていう木を使って。木のイベントで飲めたりします。
TOSHI-LOW 木のイベントって誰がくんの? 木の人?
古谷 はい、木の(関係の)人です(笑)。子供連れとかも来ますけどね。木のおもちゃとか触ってもらって。
TOSHI-LOW あー、木のおもちゃはいいねえ。
古谷 いま、いろんな所で木が使われ始めてるんですよ。木から繊維をとって服にしたり、タオルにしたり。今までは衣食住の住のところで木を使うことが多かったけど、衣食でも使う方向で。
TOSHI-LOW 日本の木ってさあ、足りないの? 余ってるの?
古谷 余ってます。’60年代から2.5倍に増えて。輸入材や人工建材のせいで使われなくなった上に木を切る人手も減ったせいで。ヘタしたら2世代かけて育てた木が1本数千円だったりするので、後継者も育ちにくくって。最近のキャンプ・ブームでアウトドアの空間として山が欲しいって方もいますが。
TOSHI-LOW 俺も人生で3回ぐらい山指して「あの山いらない?あげるよ。」って言われたことある(笑)。「ただ道がねえんだよな」って。みんな持っててもどうしたらいいか分からないんだろうね。だったら活用法を考えた方がいい。
ーーそこで山の木を単価の高い楽器用に使ったらどうか? というのがいつも古谷さんが言ってることですね。
TOSHI-LOW ギターに使えない木とかもあるんじゃないの?
古谷 いまは色んな技術があるんで工夫しだいなんです。
TOSHI-LOW どんな木でも楽器が作れると思ったらおもしろいなー。国によって林業が盛んとかもあるの?
古谷 スイス、ですかねー。
TOSHI-LOW 技術が高い?
古谷 意識の問題ですね。で、黒字だし。だから日本はもっと木の価値を高めていかないと。
TOSHI-LOW 日本で林業が有名な県は?
古谷 岐阜、奈良、高知、宮崎、秋田‥。
TOSHI-LOW ああ、秋田はそういうイメージあるなあ。
ーーどういう所から来るイメージなんですか?
TOSHI-LOW 俺、各地の昔話とか好きで、そこにはその土地の生活の基盤になっているものが必ず出てくる。で、秋田とかは自分のお父さんがキコリで、切った木をイカダにして町に売りに行く、みたいなのが多い。
ーーヘーッ。
古谷 秋田杉とかはブランディングしっかりしてますからね。吉野杉なんかも。石川のヒバも香りの木だったりするんですが。
TOSHI-LOW じゃあギターのサウンドホールから匂いしたりするの?
古谷 します。
TOSHI-LOW (鼻を近づけて)ほんとだ! これ風呂でもいいな。
古谷 実はヒバの風呂、最近つくりまして。入ってみます?
TOSHI-LOW どこで?
古谷 ニューアコとか(笑)。
ーーこうやってどんどん日本のことも詳しくなっていきますね。
TOSHI-LOW こういうのっておもしろいと思うんだよね。勉強ってなんでおもしろいかって言ったら、いろんなことを知れるから。今日、古谷の話を聞いたから今後、山に行ったら見方が変わる。なんにも知らないとただの山だけど。だからタモリってすごいと思う。普通の人が見たらただの崖もあの人にはその地層が分かり、その上になんで城が出来たか分かる。
ーー『ブラタモリ』とかまさにそのおもしろさですよね。
TOSHI-LOW そうそう。
ーーいろんな生き方を体験してもらう幡ヶ谷再生大学も、知ることのおもしろさに通じてる部分もあるんですかね?
TOSHI-LOW 生きていくことは勉強すること。ふつうの学校で教えてくれることも本来はそこ。宇宙のことをちゃんと知れば(ACIDMANの)大木みたいになれるし。知る楽しさのキッカケが林業でもいい。
震災もね、「それを利用して何やってるんだよ?」って言う人がいるかもしれない。でも自分たちの世代でそれは起きてしまった。だったらそれをどうするのか? これはいろいろ学べるチャンスでもあると思う。自分の人生の中心が自分なら、そのたった1人の物語を作っていく中で、何百年かに一度のタームの震災が起こったんだから。
古谷 今回、幡ヶ谷再生大学の活動に、新たに林業部というのを提案させていただき、New Acoustic Camp 2024でワークショップをやらせていただくことになったんです。
TOSHI-LOW 結局なにやんの?
古谷 体験を通して木のこと、能登のことを知ってもらうべく木を使ってスツールやカスタネットを作ってもらう予定です。富山や岩手の被災地にある材木屋さんとも一緒に。
TOSHI-LOW 自分の生業を人に伝えられる、っていうのは素晴らしいことだと思う。木と一緒で、自分たち一代で実現することばかりじゃない。自分が死んだら終わり、というのと、後に繋いでつないで、っていうのではどっちが豊かかな? っていう。そういう大っきなサイクルで生きていく上で、木っていうのはめちゃめちゃいい教材だと思う。そういえばフランスの本で『木を植えた男』っていうのがあるんだよね。男は荒地にたった1人で、ただただ木を植え続けるんだけど、やがてそこに森が生まれ町ができる。この話には生きていく上での真理の原点みたいなものがあって。ぜひ読んでもらいたいね。
(インタビュー/構成 今津 甲)
BRAHMAN https://brahman-tc.com/
幡ヶ谷再生大学 https://hatagaya-saisei-univ.jp/index.html
New Acoustice Camp https://newacousticcamp.com/
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