ウクレレで繋がる
触れやすい楽器
ーー今回は関口和之さん、そして金沢でウクレレのイベントを主催されている藤本美和さんをお迎えして、お送りしたいと思います。まず、改めて関口さんのウクレレとの出会いについてお聞かせ願えますか? “’91年にハーブ・オオタさんと出会い”という記述はよく目にするのですが。
関口 友達に「今度、ラジオに世界一のウクレレ奏者が出るよ」と言われて、ラジカセの前で正座して聴いたんです(笑)。それがハーブ・オオタさんでした。「スターダスト」とショパンの「別れの曲」を演奏したのですが、「僕の持ってるのと同じウクレレでこれを?」って思うぐらいすごかった。
ーーあ、すでにウクレレはお持ちだった?
関口 その数年前に。ウディ・アレン監督の映画『カイロの紫のバラ』で、ミア・ファローがウクレレを弾くシーンがあったんです。そこで「あ、かわいい音だな。弾けそうだな」と思ってそのまま楽器屋さんに行った。置いてあったのは3本だけで、そのうちのパイナップル型を買ったんです。で、「教則本ありますか?」って聞いたら、僕らより前の世代が使っていたようなハワイの風景が表紙の本しかなくてね。開いたら知っている曲が1つもなくって「あんまり流行ってないんだろうな」と思いました(笑)。
藤本 (笑)。
関口 オオタさんの演奏に出会って、こんなに可能性のある楽器なんだと知り「もしかしたら、世の中にはこれを必要としている人がたくさんいるんじゃないか?」と思ったんです。そこから普及活動みたいなことを始めました。まず『ウクレレ快楽主義』っていう本を作って。カタカナ職業のとんがった人たちに向けて、オシャレな感じをイメージして。実はこの本をきっかけにウクレレを手にとったと言ってくれる人もけっこういるんです。
ーーそれは嬉しいですねえ。
関口 そのあと、どうしてもオオタさんに会いたくて、当時作っていたアルバムの中にウクレレの曲を作って、レコーディングさせていただいたんです。

ーーウクレレはべースと同じ4本弦の楽器、でもありますが。
関口 そこは人間工学的にも大事な部分。親指をネックの裏に置くと、自由になるのは残り4本。で、弦も4本なのでね。あとは、低音のベースをずっとやってると高音が欲しくなるんですよね。逆にウクレレをやっているとベースを意識しちゃう。お互いに補完関係にあるような気がします。ベーシストでウクレレ好きな人、多いんですよね。
ーー興味深い話ですねえ。それにしてもすでに30年以上。これほどまでにウクレレに心を奪われ続けたというのは?
関口 音とか音楽だけじゃなく、ウクレレを通じたコミュニケーションっていうのがすごくおもしろくてね。いま、世界中の人に「ウクレレの魅力は?」って聞くとみんな同じことを言います。ウクレレで世界が繋がるんです。
ーー今日、ここにいるみなさんもウクレレ繋がりですし。藤本さんやこのサイトの主催者・古谷さんの地元・金沢ともそこで繋がっている。金沢ではまず、’12年に金沢21世紀美術館でイベントをやられたんですよね?
関口 はい。「1年間、ウクレレのイベントをやりましょう」というオファーをいただいたんです。だったら、ただ展示するだけじゃウクレレの本質とは違う。「やっぱり生の音が鳴ってなきゃな」って思って。で、誰かその会場で音を鳴らしてくれる人はいないかな? と思って、お名前だけ聞いていた藤本さんに直接お電話したんです。いきなり(笑)。
藤本 もう、鮮明に覚えてます。間に入っていただいた方から「繋ぎますね」とだけ聞いてたんですが、まさか直に電話がかかってくるとは(笑)。
関口 相談したら、快く仲間を集めてくれたんです。
藤本 その1年間のプロジェクトが終わって、でもこれで終わらせたくない気持ちがあったんです。関口さんもこれで終わりとは思ってないんだろうな、というのは1年かけて感じてましたし。
関口 「ここから広がっていけばいいな」ってね。

藤本 自分も美術館のイベントですごく人生が変わった気がしたし、関口さんがさきほどおっしゃられたように「これが必要な方もいるんじゃないか?」って思いました。
ーーそれが2013年から続くイベント、ウクレレパイナ金沢へ。この命名は関口さんだったとか?
関口 ハワイでイベントをやった時、その名前を使ったことがあるんです。パイナって、ハワイ語で「パーティー」のことなんですけどね。
ーーイベントへのかかわり方は?
関口 いや、たいしたことは(笑)。でも、毎年必ずお邪魔してますけどね。全国にもたくさんウクレレイベントはありますが、中でもすごくバランスの整った、素晴らしいイベントだなと感じているので。
ーーバランス?
関口 会場も、参加する人たちも、地域密着な感じも。僕が考えるウクレレのイベントは、やはり観光にも寄与するぐらい地域に密着しているのがいいと思うんです。出演者もただ弾いて終わりじゃなく、金沢観光もして楽しんで帰っていただくような。
古谷 パイナとして金沢らしさも考えてたりするんですか?
藤本 金沢らしい、かどうかはわからないんですけど、おもてなしをしてまずは「あー、よかったねー」って言ってもらう。アーティストさんたちにも食べたりしながら色んな人と関わってもらえるようにしながら。そうやって手作り感のあるイベントで1日をハッピーに過ごしてもらえること、をモットーにしてます。

関口 そういうアイデアを考えていればいるほど、喜んでもらえるんですね。ホスピタリティーが大事。あとは元からある金沢の魅力ですね。食べ物もおいしいし、色んな観光施設・名所もある。それから教育も熱心なんですよね。
藤本 イべントではかならず、そこで子供がいい経験ができるように、っていう試みを入れてるんです。それがないと10年、20年後になくなってそうな気がして。
関口 もっとも習得しやすい楽器だから、子供たちでも簡単に弾けるようになる、っていうのが大事。そこで音楽とも親しんでもらって。
藤本 そこにウクレレが置いてあるとすぐ触りますよね。これで重かったりすぐ音出なかったら飽きちゃうけど、ワークショップなんかするとみんな集中して「あ、できた、できた!」ってなる。
ーー他の楽器だと、そうは行かなそうですねー。
関口 ピアノの場合だったらまず重い蓋を開けるのが大変(笑)。
藤本 みんなでできる楽しさもあるかもしれなんですね。これがギター40本だとちょっと重い(笑)。
関口 ウクレレは警戒心を起こさせない楽器だから。

木が気になる
古谷 子供の教育というところにおいては、木材も“木育”っていうのがあるんですよね。子供のころから木に親しんで木の素晴らしさを知ってもらうために。
ーーそのために例えばどんなことを?
古谷 いちばん大事なのは触れてもらうこと。僕も地元の木材青壮年会に入って毎年夏休み、地元の木を切って子供たちに色んなものを作ってもらってます。能登ヒバの香りとかも感じてもらいながら。そして大人になったら木の家を建ててもらう。現状、学校のカリキュラムには木に関する授業ってないんですけど、色々考えられると思うんですよね。数学で「木が2本ありました」でもいいし。そこに音楽もからめたいと思ってる中で、ウクレレは親和性が高いなと感じてます。

ーー関口さん、ウクレレの木としての部分へのご関心は?
関口 いろんな材を使ったウクレレがあるんですよね。マホガニー、コアだけじゃなくてスプルースもメイプルとか。変わったところだと、マンゴーなんかも試してみています。
ーー色々試すようになったきっかけは?
関口 コアに伐採制限がかかったところから。あとウクレレが世界中に広まったことで、その土地の木で作ってみようという動きもあったんです。
古谷 日本でも“日本ウクレレ”を提唱している猪古さんという方がいて‥。
関口 きのう会いました(笑)。
古谷 え!そうだったんですね(笑)。その猪古さんと出会ったときに「能登ヒバ楽器プロジェクトというのがあるのならいっぺんウクレレも作ってみようよ」ってなったんです。その時は島村楽器さんで数百台作って。
関口 日本でもいろんな木で作り始めてますよね。栃の木とか。
古谷 あと桜で作ったり。ウクレレのいいところはネック材にも針葉樹を使える。
ーーギターのように弦の張力が高くないので、針葉樹のように柔らかい材でもね。
関口 ウクレレをやっていると、普通に木が気になるんです。入ったお店の木のカウンターとか。「この木目、ウクレレにしたらいいだろうなあ」とか(笑)。
古谷 能登ヒバはもともと香りもいいんです。
関口 そうなんですか? あ、ほんとだ!

藤本 えー、わかるぐらい?
古谷 このアロマ効果がストレス緩和に繋がったり集中力が上がったり
ーー楽器にはいいですよね。リラックスして演奏に集中して(笑)。
古谷 はい。
関口 けっこう軽いですしね。
ーーウクレレを嗅ぐなんて、なかなかない光景ですよね?
関口 それがよく嗅ぐんです(笑)。コアもいい匂いですし。あと、手触りはやっぱり木が良いですよね。僕も自分でプラスティック・ウクレレをプロデュースしたことがあるんですけど、木の方がずっと持っていられる。ペットを撫でているような手触りの気持ち良さで。
ーー能登ヒバ・ウクレレの音はいかがですか?
関口 軽やかな音がします。日本の木って、重い、湿っているようなイメージがあったんですけど、これはウクレレに向いているかも。
古谷 そう言っていただけるとうれしいです。この話、ちゃんと能登の木を切る人まで還元しますから。木を切る人ってどれが何に使われるか知らないまま仕事しているんで、こういうことがみんなのモチベーションになるんです。
関口 今はハワイのコアの木が高騰してウクレレ自体の価格もすごく上がっているんです。国産材でも遜色ないよということが、どんどん広まってくれるといいなと思いますね。
古谷 値段が高いと楽器を始めにくくなりますからねえ。

ーー藤本さんはどんなウクレレを?
藤本 今はハワイのコアロハというメーカーのを。
ーーヒバのは?
藤本 弾きました。音が明るくて優しくてすぐ「あ、子供たちに弾かせてみよう」って思って、ウクレレパイナに来てくれた子供たちに試してもらいました。そしたら私が思った以上に、いい反応で。普段ウクレレを弾いてる子供でも木のことまでは気にしないんですけどね。
ーーですよねー。
藤本 それが「自分のウクレレと比べてどお?」って聞いたら「ぜんぜん音が違う」って。で、「これ、なに?」って言われたから「石川県の木なんだよー」って話をして。私自身も地元の木のこと知らなかったし、楽器もズーッとやってきたのに木のことまでは気にしてなかった。ま「いい音するな」ぐらいはわかるけど、その背景とか、今の能登の事情とかまでは。木は切ったらいけないもの、って感覚があったし。でも、いま木はいっぱいあるんですよね?
古谷 切る人がいないんで。だから杉花粉とかが広がって。
藤本 だから切る方がいいんですよね?
古谷 切って使って植えて育てて、っていうサイクルが重要です。
藤本 じゃあ、もっと能登ヒバのウクレレをたくさんの子供たちに触ってもらって、「あ、気持ちいいなー」ってなって、それをきっかけに石川県の事情とかも知ってもらいたい。能登ヒバに出会えて、またウクレレ普及の幅がひろがったような気がします。

ーー最後に震災と音楽の結びつきについてもお聞かせ願えますか?
関口 東日本大震災の時もそうだったんですが、震災当初は無力感を覚えていたんです。「音楽に何ができるんだ?」って。でも、能登半島地震の後、実際に2025年1月にサザンオールスターズとして石川県でライブをさせてもらって、現地で演奏すると音楽の“癒す力”というのを改めて感じられた気がします。
古谷 今も僕は現地の集会所で、コミュニティー形成のためにワークショップをおこなったりしています。能登は今年、被災した45000棟を解体。’26年からゼロベースでスタートする。そういう年に現地での音楽イベント、というのはより意味を持つだろうなと思ってるんです。ライヴができる会場づくりをしてる人とも支援活動してるし。
関口 手軽で親しみやすいウクレレだったらやれるかも。
古谷 ウクレレパイナ・イン・能登?
藤本 能登レレ・パイナで行きましょう(笑)。
(インタビュー/構成 今津 甲)

サザンオールスターズ オフィシャルサイト https://southernallstars.jp/
ウクレレパイナ http://ukulelepaina.com/
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